2022年11月14日

会員のおすすめ本の紹介(217)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。

『田中小実昌エッセイ・コレクション』全6巻(ちくま文庫)


ひと、旅、映画、おんな、ことば、自伝の6巻からなるエッセイ選集。カーター・ブラウンやA・A・フェア(E・S・ガードナー)などのミステリ翻訳者として活躍し、その後作家として直木賞や谷崎潤一郎賞を受賞した著者のエッセイは、軽やかで時にとぼけた感じを出しながら、通して読むと一貫した「言葉」に対する真摯な姿勢などがうかがえる。ひらがなを多用し、平易な文体で、雑談のようにあちこち話が飛ぶ文章はまさに"田中小実昌節"と呼べるだろう。読んでいてほっとする、時にはっとするエッセイ。
  

Posted by 佐賀ミステリ  at 19:48おすすめ本

2022年11月14日

会員のおすすめ本の紹介(216)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。



https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784022518378



『君のクイズ』(小川哲/朝日新聞出版)


生放送のクイズ番組。決勝戦に進んだ二人が、いよいよ最終問題にさしかかったところから始まる。

主人公の三島に対するは、競技クイズの天才、本庄。

あと1問でどちらが優勝するかが決まる、そんな緊迫感の漂うシーンである。

やがて最終問題が読み上げられようとする、その瞬間、対戦相手の本庄が回答ボタンを押す。

本庄が回答する。

まさかの正解、そして優勝。

大事なことなのでもう一度言う。

最終問題が読み上げられようとするその瞬間に、本庄が回答する。

つまり、本庄は最終問題を聞く前に正解したのだ。

主人公の三島が、なぜ本庄がそのような奇跡的な所業が出来たのかを探る

というのが大まかな本筋。



詳しいあらすじはAmazonに譲るとして、なぜ本庄が問題を聞かずして正答出来たのかを

探るプロセスはちゃんとミステリだし、その解決も一定の納得感はある。

(少なくとも、事前に問題を盗み見ていたというレベルではないのでご安心を)

私が何より感動したのは、クイズという競技(ある意味格闘技?)を通して

「知ることって何?」とか、「今まで自分が触れあってきた人物や物事って何?」

というのを考えさせてくれた点である。

なぜこの世界は人間が住むのに適した条件になっているのだろう?という疑問に

対する回答・考え方の一つに「人間原理」というのがあるが、

この本はある意味それを個人レベルで解釈しているような気がする。

自分が生まれた環境だったり時代だったり、国だったり、自分を基礎づけるもので

選べないものは沢山あるが、それでも自分で選んできたものは沢山あるはずで、

それは何だったの?それをどう解釈すれば良いの?それは人生の何になるの?

などと考えさせられるのが本作だと思う。

本庄が優勝できた謎を中心に、クイズにまつわるテクニックや美学を交えつつ

何より「自分の人生ってナニで(whatとhow)出来ているんだっけ?」という謎

に向き合ったのが本作ではないだろうか。

そしてその回答は、圧倒的な人間賛美を目指していたと私は思う。
  

Posted by 佐賀ミステリ  at 19:38おすすめ本

2022年11月13日

会員のおすすめ本の紹介(215)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。



https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784575245714


『不知火判事の比類なき被告人質問』(八樹 純/双葉社)

フリーライターの湯川和花は知人の女性ライターの子どもの病気で急遽頼まれた裁判を傍聴して記事を書く仕事を始める。初めての裁判に緊張しつつ頑張る和花の姿に共感。そして裁判所で知り合う傍聴マニアの会話がとてもリアル。
その後タイトルの通り不知火検事の《他では類を見ない》被告人質問。誰も考えつかない驚きの真実にたどりつく。
ライター目線から書かれる法廷場面の緊張感。不知火検事が何を言うのかが気になるラスト。ページをめくる手が止まらない。暴かれる真実も人間の深い内面が丁寧に描かれていて思わず胸にぐっときます。一気読み確実です。
  

Posted by 佐賀ミステリ  at 21:52おすすめ本

2022年11月13日

会員のおすすめ本の紹介(214)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。


『クイーン警視自身の事件』(エラリイ・クイーン/ハヤカワ・ミステリ文庫)


名探偵エラリー・クイーンの頼れる父親、リチャード・クイーン警視を主役とする異色作。
ニューヨーク市警を定年退職したリチャードは、富豪夫妻の赤ん坊の保母を務める熟年女性ジェシイと親しくなる。
だがその矢先、この赤ん坊が枕で窒息して死亡するという事件が発生。
地元警察が事故死と断定する中、第一発見者のジェシイだけは殺人であると主張し、彼女の言葉を信じるリチャードは捜査に乗り出す。
退職して警察官としての権限を失い、息子エラリイの力も借りられない状況の中、年老いたリチャードは一個人として難事件に挑むが……。
五十代に達した巨匠クイーンが、現代社会に生きる老人のあり方を巧みに描き出した、円熟味あふれる一作。  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:51おすすめ本

2022年11月13日

2022年11月の例会を開催しました

佐賀ミステリファンクラブ2022年11月の例会を開催しました。

今月の例会は対面とオンラインで実施しました。
対面7人、ZOOM7人、計14人の参加がありました。

〇日時:11月13日(日)13時~17時
〇課題本:『葉桜の季節に君を想うということ』
〇内容:
 ①おすすめ本紹介
 ②課題図書の感想
 ③課題図書についてのフリートーク等

読書会では、
・初読時は驚きのあまり頭がパニックになった
・再読すると伏線が至る所にちりばめられていて感心
・日本のミステリ史上、タイトルの回収が最も美しい作品
・著者が40歳そこそこの年齢でこれを書いたというのが凄い
・冒頭からラストまで、何年経っても記憶が色あせない名作
・ミスリードが少し強引に思える部分もある
・真相が明かされた時に清々しさを覚えるのは、主人公の造形によるところが大きい
・若書きの印象が強かった著者が、このような円熟味あふれる小説を書くようになったのが驚き
・現代の若者が読むと、刊行時の読者ほど意外性を感じない可能性もあるかも
・2000年代以降の国産ミステリで十指に入る傑作
・高い評判を先に聞いていたせいで、少し驚きが減じてしまった
・著者が新たな処女作を生み出そうとするような熱を込めて書いた力作
・霊感商法というテーマは今読むとタイムリー
・過去パートはネタの構成上必要なのは分かるが、話としては少し浮いている
・様々な面で主人公が自分と重なり合って、共感できた
などの意見が出るとともに、読者の年齢層による感想の違いや、ミステリを映像化するに際しての困難、時代を超えて楽しめるミステリの条件、などにも話が及び、有意義な会となりました。  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:42例会