2024年04月18日

会員のおすすめ本の紹介(251)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。

『スリー・カード・マーダー』
(J.L.ブラックハースト/創元推理文庫)
犯罪組織のボスを父親に持つ、腹違いの姉妹。とある事件をきっかけに、姉は家族と縁を切って警察官の道に進み、妹は父親の跡を継いで一流の詐欺師へと育つ。
姉妹の別れから15年後、警部補にまで昇進した姉を待ち受けていたのは、不可解な密室殺人事件。しかも被害者は、姉妹が15年前に関わった事件の関係者であった。自分たち姉妹に関係する事件だと直感した警部補の姉は、捜査のために詐欺師の妹とやむなく再会することに。これが正反対の世界に生きる姉妹による、異色の共同捜査の始まりであった……。

警察官とアウトローの凸凹コンビという鉄板の設定をフル活用した、痛快でスリリングな捜査小説。唐突に『三つの棺』の密室講義を引用し始めたりする、著者のミステリオタクぶりも見逃せない。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784488217068  

Posted by 佐賀ミステリ  at 12:22

2024年04月18日

会員のおすすめ本の紹介(250)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。

『とむらい機関車』大阪圭吉/創元推理文庫
昭和七年にデビューした著者の傑作集。
名探偵のロジカルな推理はもちろん、ホワイダニット、ホワットダニット的な作品も多く、今読んでも楽しめます。

昭和二十年に三十三歳で戦病死されたのが惜しまれます。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784488437015  

Posted by 佐賀ミステリ  at 08:01

2024年03月24日

会員のおすすめ本の紹介(249)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。

諏訪部浩一『『マルタの鷹』講義』

ハメットの傑作ハードボイルド小説『マルタの鷹』を、アメリカ文学研究者が精読してゆく文芸批評です。適度に固くスルスル読める文章で、論がわかりやすいと感じます。チャンドラーは好きだけど、ハメットはあまりピンとこないな、という方にうってつけの本ではないでしょうか。  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:46おすすめ本

2024年03月24日

会員のおすすめ本の紹介(248)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。

海野弘『LAハードボイルド 世紀末都市ロサンゼルス』
ロサンゼルスという都市の都市論を、レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルド、ジェイムズ・エルロイの作品を紐解きながら論じた本です。ロサンゼルスという都市の解像度が上がるにつれて、この三者の作品の解像度もクリアになっていきます。
  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:42おすすめ本

2024年03月24日

会員のおすすめ本の紹介(247)

北上次郎『冒険小説論 近代ヒーロー像一〇〇年の変遷』創元推理文庫


大衆小説史に冒険小説を位置づける労作です。
いつもの北上さんの筆致は抑え気味で、膨大な作品・文献を読まれたことが簡単に察せます。
それでも「読みたくさせる書評」は健在で、実際に私は『大菩薩峠』に大変興味が湧きました。
  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:38おすすめ本

2024年03月24日

会員のおすすめ本の紹介(246)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をします。

『地の果ての獄』(山田風太郎/角川文庫ほか)

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784041356685

後に監獄改良と囚人の待遇改善に尽力し、「愛の典獄」と謳われた刑務官・有馬四郎助の若き日の物語。明治十九年、開拓途上の北海道の監獄に看守として着任した有馬。当初は囚人たちを単なる罪人としかみなしていなかった有馬であったが、日本初のクリスチャン教誨師・原胤昭や、数奇な運命に翻弄されて囚人となった者たちと出会う中で、少しずつその認識を改めていき……。個性的で魅力的な登場人物たち、哀切で味わい深い人間模様、縦横無尽に史実をフィクションに組み込んでいく手管、痛快にして荒唐無稽なストーリー、そして最後に残る得も言われぬ余韻。天才・山田風太郎の作家性の全てが余すところなく
詰め込まれた、明治物の大傑作。  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:17おすすめ本

2024年03月17日

2024年3月の例会を開催しました

佐賀ミステリファンクラブ2024年3月の例会を開催しました。

今月の例会は、対面とオンラインで実施しました。
対面17人、ZOOM2人、計19人の参加が
ありました。
また、作家の伊吹亜門先生が、特別ゲストとして参加されました。

〇日時:3月16日(土)13時~17時
〇課題本:『刀と傘』
〇内容:
 ①おすすめ本紹介
 ②課題図書の感想
 ③課題図書についてのフリートーク等

読書会では、
・この時代でしか成り立たないネタを集めた、ある意味で特殊設定ミステリ
・読者が物語に入り込んでいきやすい人物造形が良い
・全ての短編で、いったん解決した後に何らかの新たな真相が提示されているのが凄い
・連作ミステリ短編集としてのヴァリエーションが、本当に豊か
・過去を舞台にしているからこそ、飛躍をともなうホワイダニットの面白さを描きつつも、説得力を持たせられている
・本作で描かれる江藤新平の人間性が、どこまで史実に即しているのかが気になる
・正義が目まぐるしく移り変わる、明治という時代ならではの物語
・章ごとに視点が切り替わることで、江藤と鹿野の信頼関係の変遷が巧みに描き出されている
・『雨と短銃』を読んでから再読すると、「佐賀から来た男」に綺麗につながっていて感動する
・ミステリ面の構成にせよ、文章力にせよ、この若さで書いたのが信じられないほど図抜けている
・鹿野も江藤と同じく実在の人物だと勘違いしてしまったほど、人物造形がリアル
・幼少期から江藤新平に慣れ親しんだ佐賀県民としては、短編ごとに彼の描き方がどんどん変わっていく展開に、心がかき乱された
・罪と罰を巡るテーマが、ローレンス・ブロックのマット・スカダー物を彷彿とさせる
・『明治断頭台』と読み比べると、弾正台の描かれ方にかなり違いがあって面白い
・連城三紀彦を思わせる人間の機微の描き出し方が印象的
・ラスト2行で史実を簡略に説明して唐突に終わる締め方が、むしろカッコ良い
・ミステリというより、歴史人情話として素晴らしい
・伝統的な探偵役と助手のすれ違いの物語を展開しながら、それを最後に一ひねりして味のある結末にしているのが見事
・それぞれの自分の義を貫いて幕末という時代を生きた人々の姿が、物語を通して良く伝わってくる
・作者は現代の歴史ミステリの代表選手とも言うべき存在
などの意見が出るとともに、連作短編集全体の構想が出来あがっていった経緯や、歴史ミステリを書くに際しての取材や時代考証の難しさ、佐賀県民にとっての江藤新平のイメージと思い入れなどにも話が及び、有意義な会となりました。



  

Posted by 佐賀ミステリ  at 18:58例会

2024年02月14日

会員のおすすめ本の紹介(245)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をし
ます。

『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』(大矢博子/東京創元社)

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784488015459

ミステリの女王アガサ・クリスティの作品群について、様々な角度から解説した入門書。
魅力的なシリーズ探偵たちがたどった変遷や、イギリス現代史が作品にもたらした影響
など、クリスティの多面的な魅力を知るのに格好のガイド本。騙しの技巧についての
詳細な分析などもあり、ミステリマニアにとっても読みごたえ十分な内容となっている。
思わず「へぇ」となる楽しいトリビアも満載で、クリスティ初心者から熱心な愛読者まで、
全ての人におすすめの1冊。  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:33おすすめ本

2024年02月11日

2024年2月の例会を開催しました

佐賀ミステリファンクラブ2024年2月の例会を開催しました。

今月の例会は、対面とオンラインで実施しました。
対面9人、ZOOM4人、計13人の参加がありました。

〇日時:2月11日(日)13時~17時
〇課題本:『春にして君を離れ』
〇内容:
 ①おすすめ本紹介
 ②課題図書の感想
 ③課題図書についてのフリートーク等

読書会では、
・ミステリではないが、極めてクリスティーらしい小説
・内容が強烈すぎて、これまで何度も読もうとして途中で挫折した
・若い頃に読んだ時は登場人物の醜さを身の回りの他人と重ね合わせていたが、今回は「自分にもこういう面があるかも」と思ってしまい辛かった
・現実から目を逸らし続ける主人公の自己欺瞞が、読んでいて息苦しい
・偽善的な話よりも、こういった人間に対する悪意が感じられる小説の方が、ニヤニヤしながら楽しめる
・本心を妻に言わずに誤魔化し続ける夫もずるい
・主人公の歪んだ主観の描写を通じて、周囲の人間の彼女に対する評価を読者に対して浮き彫りにするというのは、人間への洞察が相当に深くないとできない書き方
・娘のことで当人そっちのけで両親が言い争う場面を読むと、「こういう親っているよね」とリアルに感じてしまう
・主人公を自分自身に置き換えて、自分がしてきた子育てについて考えさせられてしまう
・10代で初めて読んだ時は主人公に嫌悪感しか抱かなかったが、歳を取ると世の中はこんな人間ばかりだと気づく
・ラストで主人公が選んだ生き方を幸せととらえるかどうか、読者に踏み絵を迫るような作品
・なぜこんな小説を書こうと思ったのか、クリスティーに聞いてみたい
・普通小説と言われるが、ほとんどサスペンスかスリラーのようなスリリングな読み味
・読む時期によって、印象が本当に大きく変わりそうな作品
などの意見が出るとともに、タイトルに込められた意味や、終盤に登場する人物の存在意義、英米日それぞれの価値観や文化的背景の違いなどにも話が及び、有意義な会となりました。
  

Posted by 佐賀ミステリ  at 20:41例会

2024年01月09日

会員のおすすめ本の紹介(244)

会員から寄せられたおすすめ本の紹介をし
ます。

『白亜紀往事』(劉慈欣/早川書房)

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784152102782

世界的ベストセラー『三体』の著者・劉慈欣の初期長編。白亜紀末期、知性を
発達させた恐竜と蟻が、とある出来事を契機として交流を始め、互いの生物的
特性を活かし合う形で、高度な文明を築き上げていく。しかし、やがて二つの
文明の間で衝突が起こり、地球全土を巻き込む大戦争が引き起こされることに
……。荒唐無稽なIFの面白さに満ち溢れた、SFの佳編。  

Posted by 佐賀ミステリ  at 21:20おすすめ本